地域金融機関による事業承継の取組みについて

斎藤 弘樹

日本M&Aセンター海外事業部

事業承継
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[非表示]

この度の新型コロナウイルス感染拡大に際し、罹患された皆様および感染拡大により様々な影響を受けている皆様に心よりお見舞い申し上げると共に、一日も早い事態収束をお祈り申し上げます。

2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、そしてこの度のコロナ禍。いつ起こるか分からない未曾有の事態が発生した際に、後悔しない為にも、常に先を見据えた行動、準備することの重要性を考えさせられました。 M&Aにおける準備とは何か考えていきたいと思います。

2025年までに127万社が廃業の危機

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています。

この127万社は、日本企業全体の1/3にあたり、現状を放置することで、2025年までに約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われるという試算が出されています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。 さらに、この度のコロナ禍で大きな影響を受けた、飲食・観光業を中心に廃業・倒産が増えることが予想されます。

出典:平成28年度総務省「個人企業経済調査」、平成28年度帝国データバンクの企業概要ファイルから中小企業庁推計

事業承継における準備期間

事業承継はどの企業にも関係する経営課題になります。仮に親族・従業員承継を選択した場合、 一般的には後継者育成まで含め約10年の期間を目安にしておくと良いと言われています。 一方で、M&A(第三者承継)の場合は、相手探しに1年~2年、経営の引継ぎに1年~3年の合計2~5年程度の期間を要することになります。

未曾有の事態が発生した際に対処できるように、企業存続に向けた選択肢の整理を行い、早い段階から準備をしておくことが重要だと考えます。

どこに相談し、計画を立てるべきか

事業承継というセンシティブな話を、まずはどこに相談すれば良いのか分からないという声を多く聞きます。 一般的には、M&A専門会社、定期的にコンタクトを取る専門家(会計・税理士・弁護士事務所、コンサルティング会社)・国の機関(各都道府県に設置されている引継ぎ支援センター)が挙げられますが、昨今、地域金融機関も事業承継に非常に力を入れています。

地域金融機関が事業承継に取り組む背景には、(1)本業である貸出収益の低下によるコンサルティング手数料の強化、(2)地元企業の存続と発展に寄与するという地域金融機関としての使命、の2点が挙げられます。 よく「借入金がある金融機関に事業承継の相談をすると、融資を返済しなければならないのではないか」というご質問をオーナー様から受けますが、決してそんなことはありません。

地域金融機関は、地元の企業がなくなることに対して、強い危機感を抱き、地元の発展、企業を救っていくという使命感を持っていますので、借入金を引き上げるということはありません。 事業承継を検討する初期の段階から取引のある地域金融機関の担当者にご相談してみてはいかがでしょうか。

地域金融機関と日本M&Aセンターの連携は唯一無二

地域金融機関と日本M&Aセンターは設立時から連携を行っています。現在では、地域金融機関の約9割と提携しており、M&Aの分野において、友好な関係を築いています。

昨年度も地域金融機関から多くの相談をいただき、成約を実現することができました。 これだけの連携を行える背景に、当社への出向制度があります。
毎年約30の金融機関の方々に出向してもらうことで、M&A業務を修得してもらっています。この規模で出向者を受け入れているのは、当社のみだと思います。 出向後は、金融機関に戻りM&A業務において連携を行っています。地元のことは地域金融機関の方々が一番知っていますので、県外の相手先を当社が担当することで、ベストな相手を探せる強固な体制を構築しています。

また、オーナー様の事業承継に関する入口の相談、M&A後もその地域で生活をされるオーナー様の資産の運用、相続等はやはり地元の金融機関が入る大きなメリットだと思います。

事業承継・M&Aに関するご相談を無料、秘密厳守で承っております。お気軽にお問合せください。

著者

斎藤 弘樹

斎藤さいとう 弘樹ひろき

日本M&Aセンター海外事業部

一橋大学卒業後、外資系金融機関入社。2012年日本M&Aセンター入社以降、地域金融機関と数多くのM&Aに携わり、後継者に悩んでいる、または更なる成長を志向する経営者に、M&Aという手段で会社の継続と発展を支援している。

この記事に関連するタグ

「With コロナ・事業承継・金融機関・経営者」に関連するコラム

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第3回「後継者について知ってほしいこと」~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第3回「後継者について知ってほしいこと」~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第2回「最適な後継者選びに必要なこと」~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第2回「最適な後継者選びに必要なこと」~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第1回 いい事業承継とは?~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第1回 いい事業承継とは?~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思いますが、その参考にしていた

モーニングサテライト出演で、大きな反響をいただきました!

広報室だより
モーニングサテライト出演で、大きな反響をいただきました!

ちょうど1週間前の2020年10月7日(水)5:45~7:05放映のテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に当社代表取締役三宅卓が出演。広報チームも同行いたしました!番組では「コロナ後の日本のM&Aはどうなる」をテーマにした「点検コロナ後の世界」のコーナーで三宅が生出演し、コロナ禍におけるM&Aの状況や中堅・中小企業のM&A仲介のリーディングカンパニーとしての取り組みなどを紹介。特に、地域金融

廃業で全てを諦めるのか、それとも譲ることで大切なものを守るのか

事業承継
廃業で全てを諦めるのか、それとも譲ることで大切なものを守るのか

昨今、新型コロナウィルスの感染拡大により、長引く外出自粛や休業要請などで需要が急減し、資金繰りが厳しくなり、このまま経営し続けることに、ふと「限界かもしれない」と感じた経営者は少なからずいらっしゃると思います。知らぬ間に資金繰りが悪化し、どうにもこうにも立ち行かなくなり、倒産せざるを得なくなる。最悪な状況を回避するために、一度ご検討頂きたいのが、会社を「畳む選択肢」と「譲る選択肢」です。「畳む選択

個人保証とは?メリットやデメリット、関連ガイドラインを解説

M&A全般
個人保証とは?メリットやデメリット、関連ガイドラインを解説

中小企業の経営者が金融機関から融資を受ける際、個人保証を求められることがあります。個人保証に応じると融資が受けやすくなる反面、資金難に陥った場合は、経営者の個人資産を切り崩すなどの必要が生じます。本記事では、個人保証の概要、メリットやデメリット、そして「経営者保証に関するガイドライン」について取り上げるほか、M&Aによる個人保証の解除についてもご紹介します。個人保証とは個人保証とは、企業が金融機関

「With コロナ・事業承継・金融機関・経営者」に関連する学ぶコンテンツ

「With コロナ・事業承継・金融機関・経営者」に関連するM&Aニュース

積水ハウス、積水ハウスサポートプラスへアフターサービス事業を吸収分割により承継

積水ハウス株式会社(1928)は、2024年11月15日付「当社アフターサービス事業の分社化(会社分割)の方針決定に関するお知らせ」のとおり、アフターサービス事業の分社化(会社分割)に関して、2024年12月2日付で設立した積水ハウス100%出資子会社である積水ハウスサポートプラス株式会社(大阪市北区)との間で吸収分割を行うことを決定した。積水ハウスを分割会社とし、積水ハウスサポートプラスを承継会

エンゼルフォレストリゾート、名鉄都市開発から別荘地管理事業を承継

株式会社エンゼルグループ(5534)は、完全子会社の株式会社エンゼルフォレストリゾートが、名鉄都市開発株式会社(愛知県名古屋市)より別荘地管理事業を承継すると発表した。エンゼルフォレストリゾートを承継会社とし、名鉄都市開発を分割会社とする吸収分割方式。エンゼルフォレストリゾートは、静岡県伊東市近傍に位置するエンゼルフォレスト赤沢望洋台をはじめ、東伊豆、那須、新白河等のエリアにてリゾート事業を展開し

夢酒蔵、京都酒蔵の若宮酒造を買収

夢酒蔵株式会社(京都府京都市)は、2024年11月28日締結の契約により、11月29日に若宮酒造株式会社(京都府綾部市)の発行済み株式の98.8%を取得した。夢酒蔵は、対象を酒蔵に特化したマネジメント・サポート・カンパニー。酒造業への経営支援を行っている。若宮酒造は、大正9年創業の酒蔵。「綾小町」のほか様々な酒を製造している。背景・目的後継者不在で事業継続が危ぶまれていた若宮酒造は、2024年9月

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース